住民アンケートの集計結果と熊本世田谷区長への質問書 | とどろきシンポジウム

住民アンケートの集計結果と熊本世田谷区長への質問書

アンケート集計結果から

 

熊本哲之世田谷区長への質問書

 


2005年2月8日

 

 

熊本哲之 世田谷区長 殿

 

 

 大井町線とその周辺環境を愛する住民グループ

 

事務局:代表3名 

 

 

アンケート集計結果から熊本哲之世田谷区長への質問書

 

 

東急電鉄株式会社(以下東急とする)による大井町線急行化計画、及びそれに伴う等々力駅地下化工事計画については、平成7年に認可を受けて以来10年もの時を経た今なお多くの問題を抱えたまま中断した状況であることはご承知の通りです。

東急の説明によれば、平成8年より「大井町線急行乗入れを考える会」という地元代表の方々と話合いを持ち、そこにおいて理解を得たとのことですが、多くの住民が本計画を知り得たのは平成15年以降で、以来十分な説明もないまま、現在東急は工事に着手しようとしております。しかしながら、鉄道事業計画が持つ公共性を考えるに、事業者としては広く住民に説明し、意見を聞いてコンセンサスを得る義務があると考えます。所轄の玉川総合支所においては、これまでも事業者東急に対し度重なるご指導、ご尽力をいただいているにもかかわらず、住民を無視し、また地元行政をも欺くかのごときに見える事業者の姿勢は看過できるものではありません。

このような状況下、私ども大井町線とその周辺環境を愛する住民グループは「聞く耳を持つ区長として区民の声を聞き、役所の内外を問わず、前例にとらわれずに区政を進めたい。」と公約されておられる熊本区長に住民の真の声をお届けするべく、大井町線等々力駅周辺住民と利用者を対象に住民アンケートを実施いたしました。

つきましては、日頃「住民の目線で考え、区民の生命と財産を守るという行政の役割を的確に果たすため、安全で安心なまちづくり」に全力で取り組んでおられる熊本区長としては、このアンケート結果で示された住民の声をどのように受け止められ、その民意をより良いまちづくりに反映させていただけるのか、区長ご自身の率直なご見解をもって下記質問に明確にお答え下さい

 

 

 

 

【質問事項】

1.地域住民の生活に関わる足として重要な問題である大井町線の問題に関する下記のようなアンケートに表れた結果について、区長はどのようにお考えでしょうか?

アンケートでは、東急大井町線の利用頻度は3人に1人が少なくとも1週間に2日以上で、通勤通学で週5日以上利用する人と併せると75%の高い利用率となっており(Q2Q3)、なんと87%の人が大井町線に急行は必要ないと答えています(Q11)。また、駅の地下化については63%が不便になると答え(Q3080%以上が防災や治安など安全面で心配だと回答しています(Q31)。結果、実に78.5%の人が等々力駅の地下化に反対であると答え、賛成と答えた人は僅か4.4%です(Q32)。この地域住民の日々の生活に密接に関る調査結果について、区長の率直なご意見、ご感想をお聞かせ下さい。

 

 

2.住民のみならず多くの利用者が、等々力渓谷に万が一にも湧水や植生に影響が及ぶやもしれないリスクを冒してまで地下化工事はするべきではないと考え訴えていますが(アンケートのその他ご意見を参照下さい)、区長はこの声をどのように受け止められますか?

 

世田谷区が近年観光スポットとして力を入れておられる等々力渓谷の認知度は78.9%とかなり高く(Q16〜18)、貴重な自然資産である渓谷への影響については85%の人が多少なりとも影響があってはならないと回答しており(Q22)、渓谷の水と緑を守りたいとする住民の強い願いが表明されました。等々力駅地下化工事計画に関しては、平成12年発行の「大井町線急行乗入れを考える会」の総括的報告書、及び平成13年9月の定例議会以降、平成15年5月の都市整備常任委員会にいたるまで議会でも再三取り上げられているにもかかわらず、『水』の問題については一言も言及されていないことから、事業者、行政とも『水』という重大な問題点を見落としており、この点については平成15年6月の工事説明会で住民の指摘により初めて問題化しました。現在世田谷区の指導により「等々力駅地下化工事技術検討委員会」で調査と検討がなされていますが、平成16年12月の第3回委員会では「何もしなければ渓谷の一部地域の湧水と工事区域450m範囲の地盤に影響がある」との調査結果が報告されると同時に、いくつかの工法案が提示されました。しかしながら、一方では「当委員会は工事そのものの是非を決めるものではないが、安全だからやれとも言わない」との責任逃れともとれる委員長発言もありました。今後、委員会による結論をもって、東急は現状維持の最善の方策としての通水管設置工法を提案しておりますがかかる工法が今後何年に亘って有効であり、自然災害や地震などの不測の事態にどれほど耐えられるかについての工事実績等のデーターを公開していません。その工法は工事前と変わらない湧水、地下水の流れを保つことが果たしてできるのでしょうか?既に、昨年10月の台風22号の大雨の際には渓谷の一部に崩落が起きたとも聞いております。東急は影響が出た時は工事を中止すると表明していますが、一度壊した自然は取り戻せません。

 

上野駅や東京駅の地下水位上昇による浮上問題、フジテレビ跡地横のビルの地下浸水事件などの例は、自然の前での科学技術の不確実性の実証であり、現在既に瀕死に近い状態にある等々力渓谷に万一影響が出た場合の責任はどこにあるのか、またその際に世田谷区としてはどのような対応ができるのか、区長の見解を具体的にお答え下さい。

 

 

 

3.今回の東急の事業計画の等々力駅地下化によって解消される踏切は、二子玉川駅から自由が丘駅間の15の踏切の内、用賀中町通りの1ケ所のみであり、その他の全ての踏切についてはそのまま残ることに加えて遮断時間が増える結果となることについて区長はどのようにお考えでしょうか?

世田谷区では平成16年7月に「開かずの踏切解消促進協議会」が結成され、また当地でも全ての踏切をなくして緑あふれる街づくりをという声も上がっております。しかしながら、等々力駅の地下化工事は開削工事による設計がなされており、将来的には自由が丘方面へ向けて連続地下化を図れるよう設計されているということですが、上野毛駅方面にある等々力2号踏切、同3号踏切は、実は谷沢川との関わりから開削で連続させることは構造的に不可能であることを80%前後の住民が認識していませんQ10)。実はこの二つの踏切は玉川小学校の通学路であり、道幅が狭い上に朝の通勤時には車輌の通行量も多いため、以前からPTAと近隣で車輌の通行止めを実施しております。また等々力2号踏切は左右とも線路が大きくカーブしているため、踏切の北側では現在でも電車が見えてから目の前を通り過ぎるまで5秒もありません。急行運行時には地下に潜ろうとする上り電車と、地下からスピードを上げて上ってくる下り電車と、どちらも今よりスピードを上げた急行電車の通過によって学童の登下校時の危険度が増すことは看過されるべき問題ではありません。

 

・玉川小に通っていたので通学路の踏切は気になる。駅の地下化や急行より先に対応して欲しい。小さな子は踏切から中に入り土手で遊んでいる。今でもその様子。(野毛2丁目25才女性)     

 

 

踏切の解消がメリットのひとつであるとうたいつつ、東急の計画にはこの2つの踏切についての対策は一切見られず、また上野毛から自由が丘までの15の踏切の内、2つのボトルネック踏切と3つの重点踏切についても何ら考慮がなされていません。運行本数が増加すれば踏切の遮断時間が増えることは明らかであり、今回の等々力駅地下化工事計画は、事業者の目的達成のためには沿線住民の危険など省みない、場当たり的で無謀な計画と言っても過言ではありません。踏切問題解決のためには、世田谷区としても将来的展望として連続立体交差事業も視野にあると伺っております。住民の生命と財産を守り、安全、安心な街づくりを提唱されている熊本区長としては、安全と目的の優先順位を無視した今回の等々力駅地下化工事計画をどのようにご覧になるのでしょうか。また、この等々力駅地下化工事が遂行された場合、取り残される踏切についてはどのような対策をお考えなのでしょうか。併せて明確にお答え下さい。

 

 

4.住民のみならず、地元行政世田谷区すらも軽視するがごとき事業者東急の不誠実な姿勢を区長はご存じなのでしょうか?

 

国土交通省の運輸政策審議会答申第18号には、鉄道事業者に対して鉄道整備の円滑化を図るため、「整備の必要性、工事内容、環境対策等に関し利用者、及び住民の理解と協力を得ることが重要」とあります。

 

アンケート調査では計画の認知度については、急行化計画が77%Q4)、等々力駅地下化工事計画が72%Q29)といずれも高い数字となっていますが、認知した時期について平成15年6月以降が60%Q5)、媒体については東急以外からの告知物と住民間の口コミが53%Q6)という結果となっています。また技術検討委員会の認知度は22.4%Q21)に留まっており、事業者東急の情報提供の不備が端的に表れています。事業者としての情報公開については、これまでにも玉川総合支所からの指導により計画説明会や個別説明会の開催などの形にはなってきておりますが、重要なのはその情報の真偽、信憑性にあります。一年の間に3回も変わる混雑率。所要時間は再三質問してもいまひとつつじつまが合わず、踏切遮断時間に至っては急行運行本数は5本を考えていると言いつつ提示された情報は急行2本の場合のものでした。最大運行本数1時間に24本(内急行12本)の際の踏切遮断時間については、住民のみならず、玉川街づくり部、世田谷区議会議員からもデーターの提示を求められているにも拘らず未だに未回答という有様です。

 

急行12本の運行計画については、平成12年の計画変更申請、住民の情報開示で明らかにされるまでは世田谷区にすら報告されていませんでした。

東急は、この運行計画では踏切遮断時間の増加と普通電車の運行本数が現行18本から12本に減ることから「当面は20本運行、急行5本を予定しております」と説明しながら、平成16年7月の計画説明会に於いて東急電鉄の事業統括部管理課長太田氏がまあ例えばの話ですけれど、急行を1時間に12本に増やしたケースで、今のケース以上に大井町線経由が増えてくるということが見てとれます。」と公然と説明を行ったことで、1時間に24本、内急行12本の運行実施を視野に入れていることを自ら明言しました。

 

このような行政すら騙すがごとき事業者東急の不誠実な姿勢と、住民不在の事業計画について熊本区長はどのようにお考えでしょうか。

 

平成15年11月の玉川タウンミーティングで、「急行を通すことについては都民としてはやぶさかでないが、その方法が適切かどうかが問題」と述べられました。運輸事業のもつ公共性は地域住民の生活に直接影響するものですが、今回の工事計画がいかに欠陥だらけであろうと、民間の一事業であり、例え住民の反対意見があってもあくまで民々の問題として捉え、また「計画の決定権は国がもっている」という位置付けで、地元行政としてのスタンスからはみ出さずに見過ごされるのでしょうか。今回の事業計画は、まさに私たちの生活に直接的に大きな影響を及ぼすものであり、その公共性の高さを考えると、事業者と行政が一体となってもっと大局的な視野で計られるべきものではないでしょうか。

大井町線の急行化が鉄道事業ネットワーク計画の一環として事業者の命題であるとしても、等々力駅地下化が最良の方法なのかどうかは大きな疑問です。急行化のために代替となるよりよい方法がないのかなど、地元行政としてもう一歩も二歩も踏み込んだ取り組みで改めて現況を検証し直した上で事業者に計画の再考を指導し、私たち区民を守る頂点に立つ区長としてリーダーシップを発揮していただくことを住民は期待しておりますが、区長はどのように受け止めていただけるのでしょうか。お答え下さい。

 

 

 

5.聞く耳を持つ区長として「主役は住民である。その考えで、区政をリードしていきたい。」と公言しておられる熊本区長のお耳に区民の真の声は届いているのでしょうか?甚だ疑問を感じている区民は少なくないと思います。

 

今回、このアンケートに込められた貴重な住民の声をお届けするに当り、私たちの真意をご理解いただくまで、なぜかとても遠い道のりでした。

 

「みどり豊かで出かけてみたいまち」

 

「豊かな自然が息づく世田谷の水や緑を少しでも後世に残すため・・・」

 

「心通う安らぎのあるまち」

 

常日頃、区長が掲げておられるこれらのスローガンは、正に住民の多くが望む「まち(街)」の姿であり、この緑豊かで長閑な環境を維持し、自然と共生したよりよい「まち(街)」となることを希望していることは、30%の人が地域(街)のあり方について意見を述べる場があれば参加したいと答えており(Q27)、また地域の情報を知る手段として、区の広報を選んだ人が69.4%Q28複数回答)10項目中1位であることからも、熊本区政への住民の期待は大きいと言えます。私たちのまち(街)づくりは、先人から引き継いだ今ある環境を残しつつ、子供達が安心して道草のできるような安全な環境を構築し、孫子の代に胸を張って引き継ぐことの出来る「まち(街)」の姿を区長と共に私たち自身も考え、取り組んでこそ真に魅力ある、誇れる「まち(街)」となり得るのではないでしょうか。この地域は古い土地柄であり、昔からの地主の方々の永年のご努力で現在の住環境が守られてきましたが、時代の移り変りとともに住民の構成も変化しつつある現在、住民代表としての任意団体の定義付けの見直しなども含めて、本当の意味で住民一人一人が自由に意見を述べあい、気楽に参加できる区政が期待されていると言えます。そのためには、住民と行政の信頼関係に基づいた協力が不可欠であると考えますが、残念なことに現時点では区民の行政への信頼感は薄く、むしろ不信感が先行する場合が多いのは事実です。区長が日頃おっしゃっておられます「区民の目線で考える」姿勢が行政の隅々まで行き届いてはじめて区民の不信は払拭され、区民と行政との信頼の絆が結ばれた時にこそ本当に魅力ある「まち(街)づくり」が実現されるのではないでしょうか。この点について区長のご見解と今後の取り組みを具体的にお答え下さい。

 

 

 最後に、私たち住民が頼りとする世田谷区長として、ご回答いただける範囲がどこまでなのか私たちには知る由もありませんが、最も身近で信頼し、頼れる行政は世田谷区であるという思いから以上の質問をさせていただきました。

区長には日々公務ご多忙のこととは存じますが、どうかこのアンケートに込められた住民ひとりひとりの声に耳を傾けていただき、区長の誠意あるご回答をいただきますよう、切にお願いいたします。

 なお、回答は2月末までに文書にていただきますようお願い申し上げます。

 

以上